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「フィルム文化を存続させる会」上映会&シンポジウム VOL.2
「フィルム文化を存続させる会」、9月18日の第一回上映会&シンポジウムでは、 " エクスぺリメンタルな試み"、" パーソナルな多様性 " と題した2つの傑作選を上映しました。大きなスクリーンに映写された作品群はスリリングで、心躍るものでした。 今回の第二回では若干、物語映画へシフトした作品を上映します。第一部は1979年から1984年までの作品。これらはいずれも雑誌ぴあの主催するPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で上映された作品です。この時期は、PFFがその前史である77年開催の 「ぴあ展」映像部門として始まってからまだ数年ですが、8ミリ映画状況は隆盛で、高校生、大学生たちの作り手たちが全国で拡大していました。PFFへの応募作品数は85年のピーク(760作品)まで増加していきます。もちろん、わずかな16ミリ作品をのぞけば応募作品はすべて8ミリ。 応募者のなかにはその後、劇場公開の映画を監督するようになった人たちも多く含まれますが、そればかりでなく、超長篇から極短篇まで、8ミリだけが可能な文体を作り上げた作家的個性が次々に登場しました。 今回の第一部は、その個性を打ち出した作家たちのプログラム。コメディとホラーの領域 (あらゆる映画がこの両ジャンルに含まれると、考えられます)を拡大する批評性持った作品を組みました。香川まさひとの『青春』は一瞬のオチ(お聞き逃しなきよう)に至るまでの呼吸の見事さ、手塚真の『HIGH SCHOOL TERROR』は卓抜な感覚と技術でジャンルへの愛と批評とを表わした作品、風間志織の『0×0』は高校生だった作者が応募用紙に、「ゴダールの『気狂いピエロ』を見てスゴク感動、この作品を自分流に作ってみようと思った」と書いていますが、PFFの審査員の一人だった長崎俊一監督が強く惹きつけられたと言う「晴れ渡ったような暗さ」を持った独自の虚構世界を作り上げる鋭敏な感覚に驚きます。浅野秀二の『この道はいつか来た道』は猟奇と方向感覚の失調とメディア批評とを重ねた(筒井康隆的でもある)作品。エスカレートする状況の滑稽さが秀逸です。 そして、シンポジウムをはさんだ第二部では、次々に独特な8ミリ映画が登場した年月をはさむ形で、最も早い時期に大林宣彦監督が撮ったアヴァンギャルド作品『中山道』と、それから40年後の山田勇男作品『蒲団龍宮記』。大林作品は、現実にある風景を解体し、再構成する、手と目(身体)とカメラが一体化した8ミリの独自性を表わしているとすれば、山田作品の静寂の世界は8ミリという特異性を忘れさせる「映画」そのもの。 この両者の豊かさの間にすべての映画があると思うのです。 (大久保賢一) 14:30〜16:30 上映プログラム 1 『青春』 香川まさひと 8mm 4分 1982 『HIGH-SCHOOL-TERROR 』 手塚眞 8mm 6分 1979 『 0×0』 風間志織 8mm 23分 1984 『この道はいつか来た道』 浅野秀二 8mm 80分 1982(DVDでの上映) 20:00〜20:40 上映プログラム 2 『中山道』 大林宣彦 8mm(レギュラー8) 16分 1963(DVDでの上映) 『蒲団龍宮記』 山田勇男 8mm 21分 2003 香川まさひと 1960年生 『青春』に続く『バスクリンナイト』(83)をベストワンに推したPFF審査員の大島渚監督に「このような映画がどこから発想されるのか、私には想像もつかなかった。まぎれもなく誰にも真似しようもない個性を持った作家」と言わせた。その後、NHK演芸台本コンテスト最優秀賞受賞を機に脚本家に。『MISTY』(91)『あさってDANCE』(91)『お墓と離婚』(93)『ハサミ男』(04)などの映画化作品、TV作品のほか、マンガ原作も手がける。 手塚真 (シンポジウムの項をご参照下さい) 風間志織 1966年生 PFF84で上映された『0×0』によって、この年から始まった「スカラシッ プ」の監督に選ばれ、16ミリ作品『イみてーしょん、インテリあ』(89)を監督、同年の8ミリ長篇『メロデ Melodies』をへて、95年の35ミリ作品『冬の河童』以来、 『火星のカノン』(01)『せかいのおわり』(04)と監督。海外映画祭にもコンスタントに作品が招待される。 『非・バランス』(00・冨樫森監督)では脚本を担当。 浅野秀二 1959年生 立教大学卒業後に撮った『この道はいつか来た道』は立教パロディアス・ユニティ製作。黒沢清、万田邦敏らユニティの創立メンバーとは、大学在学中は重なっていないが、その後浅野がリンクス・デジワークス所属のVFXプロデューサーとなって共働することになる。黒沢の『アカルイミライ』(あのクラゲを作った)『回路』『LOFT』『叫』、万田の『ありがとう』、塩田(「この道」に出演)の『どろろ』、といった作品だ。 大林宣彦 1939年生 個人映画、自主映画とよばれた8ミリ映画作りの先達の一人。シングル8登 場以前から8ミリ作品を監督、劇場公開の映画 『HOUSEハウス』(77)『転校生』(82) 以前の16ミリ作品、とりわけ『EMOTION=伝説の午後=いつか見たドラキュラ』(67)が、その後の高校生、大学生に大きな影響を与え、たくさんの若い作家を生み出した。(63年に藤野一友と共作した16ミリ作品『喰べた人』はベルギー国際実験映画祭で特別賞を受賞)日本のコマーシャル・ディレクターの草分けであり、企業外の映像作家が劇場公開作品を監督する道を開いた一人でもあった。最新作『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』の公開を控え、10月に『転校生』の再映画化をクランクインした。 山田勇男 1952年生 1977年の8ミリ作品 『スバルの夜』以来、現在まで60本を越えるフィルモ グラフィーのうち、カンヌ映画祭の批評家週間で上映された 『アンモナイトささやきを聞いた』(92)やドイツのオーバーハウゼン国際映画祭で作家特集が行われ、作品が収蔵された『月球儀少年』(00)、つげ義春原作の『蒸発旅日記』(03)といった35ミリ作品もあり、10本を越える16ミリ作品もあるが、それ以外はすべて8ミリ。山崎幹夫と並ぶ極北の8ミリ映画作家といえる。北海道に生まれ、73年に湊谷夢吉と出会い、同人誌『銀河画報』の設立に参加。寺山修司主宰の「天井桟敷」に入団して、映画の寺山作品の衣装、美術も担当。稲垣足穂や宮沢賢治、湊谷、寺山と呼応するファンタジー、ゆめとうつつの世界を独特の静寂で描き出す作品を作り続ける。映画美術監督木村威夫の監督作『夢幻彷徨 MUGEN SASURAI』(04)では脚本を担当。 17:00〜20:00 シンポジウム「映画フィルムの多様な可能性について語る」 「フィルム文化を存続させる会」は今年の4月に発足以来、フィルム文化の存続と重要 性について上映会やシンポジウムなどのイベントを行い、社会にアピールをしてきま した。また来年3月末にせまったシングル8フィルムの販売終了に対して、富士フイル ムとも話し合いを重ねてきました。しかし、まだ光明を見いだすには至っておりませ ん。今回のシンポジウムでは、映画フィルムの多様な可能性についてふれながら、フィ ルム文化存続のために私たちに何が出来るか、どのような行動をしていくべきなのか、 どのような生産基盤の整備が必要なのか、等について、パネラーの方々だけでなく、当 日会場にお越し頂いた皆さんからも御意見を頂きながら、シンポジウムから何かしらの 私たちが進むべき方向性や指針を明らかにできればと考えます。 パネラー 手塚 眞 1961年8月11日東京生まれ。 高校で8ミリ映画を作りはじめ、コンテストで受賞。大島渚ら映画監督に高く評価される。学生時代は多くの自主映画を製作する傍ら、テレビ番組の製作や映画の出演、雑誌への寄稿を行う。85年、ミュージシャンの近田春夫原案・製作総指揮による長編ミュージカル映画『星くず兄弟の伝説』を監督、全国公開する。 以降、ヴィジュアリストという肩書きで、実験的な短編映画からハイヴィジョン、CGなど、あらゆる映像メディアで先鋭的な作品にチャレンジしている。またイベントの企画、小説の執筆、デジタル・ソフトやCDの製作など、広いフィールドで多才ぶりを発揮している。99年、10年がかりで企画された長編劇映画『白痴』を完成、全国公開。ヴェネチア映画祭に正式招待され、デジタル・アワードを受賞。世界各国の映画祭に参加し、フランスでは劇場公開される。また「宝塚市立手塚治虫記念館」のプロデュースや公式ホームページの総監修など、手塚治虫の遺族としての活動も行っている。 有限会社ネオンテトラ代表取締役。株式会社手塚プロダクション取締役。生誕百年・坂口安吾映画祭実行委員。 芦澤 明子 1951年 東京都出身。青山学院大学卒。 学生時代はちょうど8mm映画ブーム。 8mm映画製作の資金稼ぎに、 ピンク映画の渡辺護監督のもとでアルバイトをしたのがきっかけでカメラの仕事に興味を持つ。 卒業後、東京映画出身の伊東英男カメラマンと出会い、撮影助手の見習いを経て、 押切隆世カメラマンをはじめ、多くのコマーシャルカメラマンのもとで経験を積む。 82年撮影者として独立。 近年の主な撮影作品: 『UNLOVED』(2001 監督:万田邦敏)、 『みすゞ』(2001 監督:五十嵐匠)、『LOFT』(2005 監督:黒沢清)、『サンクチュアリ』(2005 監督:瀬々敬久)、『叫』(2006 監督:黒沢清)、『世界はときどき美しい』(2006 監督:御法川修)、『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』(2006 監督:瀬々敬久) など。 映画以外にCF・ドキュメンタリー・ビデオ作品など多数。 また、コマーシャルの撮影で、舞台となった木造校舎が、 あと数日で壊されてしまうことを知り、映像に残したいとスチールカメラを買いに走り、 ライフワークとして、日本各地の木造校舎の記録写真を撮り続けている。著書に写真集「木造校舎の思い出(関東編)」「木造校舎の思い出(近畿・中国編)」 (情報センター出版局)CD-ROM「木造校舎」(発売:シンフォレスト)がある。 武藤 起一 70年代末からの早大シネ研で『ねこ色の伝説』『イレギュラー・キュービック』など の映像感覚に優れた8ミリ作品を監督、『闇うつ心臓』(1982、監督長崎俊一、8ミリ) などの撮影を担当。 1985年より7年間「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のディレクターを務める。1991年には、映像コンテスト番組「えび天」(TBS系)のレギュラー審査員として辛口な批評で定評を得る。その後、「神戸国際インディペンデント映画祭」のディレクターなどを経て、“映像環境プロデューサー”として、日本の新しい映画状況を切り拓くための様々な活動を展開。1997年に「ニューシネマワークショップ」を開設し、1998年には劇場用映画『アベックモンマリ』を、2001年に『とらばいゆ』をプロデュース。2003年にはNCW製作・配給による初の劇場用長編『アニムスアニマ』をプロデュース。主な著書に「シネマでヒーロー」(俳優編、監督編/ちくま文庫)などがある。 太田 曜 実験映画作家。 映画が画面上に生成する”非日常的空間と運動”による映画、非物語的展開の映画が作り出す”映画的”時間経過を”見る”映画を制作。 実験映画の制作と並行して”実験映画/個人映画/自主映画”等の非映画産業的映画の上映にも関わる。 MALTESE CROSSE VISION 代表。 1953年東京生まれ 1974年日本大学芸術学部美術科(彫刻専攻)入学 1977年〜1987年パリ第8大学映画科でギィ・フィマン、クローデイーヌ・エジィックマン、フランクフルト、シュテーデル美術大学でペーター・クーベルカに実験映画を学ぶ。 1988年〜東京造形大学、日本工学院専門学校芸術学部、非常勤講師 1997年〜実験映画の研究と普及のため MALTESE CROSSE VISION を設立。 コーディネーター 大久保賢一 1950年2月、東京生まれ。大学時代に川喜多和子さん主宰の「シネクラブ研究会」を手伝ったことから、上映活動を始め、16mm映画を作る(担当は製作)。'75年に原正孝(現原将人)らと雑誌「NEW CINEMA EXPRESS」を刊行、CINEMA EXPRESS WAYとして上映活動。'80年代にかけてPFF(ぴあフィルム・フェスティバル)の審査にもかかわる。多摩芸術学園から多摩美大上野毛の非常勤講師に。'80年代なかば以降はロッテ ルダム、香港、ボンベイ、ダマスカス、仏クレルモン・フェラン、カンヌ、ベルリンなどの映画祭に、日本映画プログラムの手伝い、審査員、プレスとして出かける。FIPRESCI(国際映画批評家連盟)メンバー。コミュニティシネマセンター・メンバー。 著書「荒野より 俳優ウォーレン・オーツ」 「カルチャースタディーズ映画:二 極化する世界映画」ほか。 「フィルム文化を存続させる会」は有志のボランティアで運営しております。活動を支 えるために賛同金・カンパの御協力をお願いします。下記の口座までお振替ください。 特に金額は定めておりませんのでお気持ちで結構です。振替の際は、必ずお名前、ご住 所、電話番号をご記入ください。 郵便振替口座:00100-7-555983 口座名:フィルム文化を存続させる会 賛同人としてご協力いただける方、メールニュースをご希望の方は下記までメールを お送りください。 info@mistral-japan.co.jp TEL:042-380-8270/FAX:042-380-8271
by film-expression
| 2006-11-28 10:38
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