フィルム文化を存続させる会

8ミリを代表とするフィルム文化衰退への対抗策を考える
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「フィルム文化を存続させる会」発足にあたって

2006年7月14日
フィルム文化を存続させる会


◆シングル8とフィルム文化の存続のために
 私たちは、フィルム文化を愛しその存続のために行動する有志の集まりです。
 今年に入ってから急速にフィルム表現をめぐる状況に大きな変化がありました。ニコン、コニカミノルタ、コダック、アグフア各社のフィルム・写真事業の縮小や撤退が相次ぎました。
 富士写真フイルム株式会社(以下、フジフイルム)は本年4月25日、シングル8フィルムの終了を発表しました。フィルムの出荷は2007年3月まで、現像サービスは2008年9月までという内容です。
 フジフイルムが開発した8ミリ映画のフォーマットであるシングル8は、1965年の発売以来、私たちに新しい感覚、ものの見かた、感動をもたらし、日本の映像文化に多大な貢献をしてきました。フジフイルムが製造を中止すると、フジ独自のフォーマットであるシングル8の歴史は終了してしまいます。シングル8の素晴らしさを実感する私たちは、このことが残念でなりません。シングル8は、私たちにとっても財産だからです。
 「シングル8の製造、現像を今後も続けていってもらいたい。事業として赤字であるなら、赤字にならないような方策をユーザーと一緒に考えませんか!」
 私たちは、このことをフジフイルムに提案し、存続のために行動したいと考えます。
 また、シングル8終了の背後には、35ミリ、16ミリといった映画フィルムのみならず、銀塩写真も含めたフィルム文化の危機があります。したがって、私たちの活動をフィルム文化全体の存続を見すえた活動につなげていこうと考えています。

◆シングル8−日本の映像文化の共有財産
 シングル8は、日本の映像文化に多大な貢献をしてきました。誰でも簡単にフィルム交換ができるマガジン方式のフィルムは、一部のマニアに限られていた8ミリ映画を多くの人々に解放しました。また、スローモーション、齣撮り、巻き戻しと多重露光といった高度な映像表現をアマチュアにも可能にしました。
 シングル8の普及によって、マスメディアと異なる視点から、市井の人々の自然な喜怒哀楽が、生活空間や服装や遊びや習慣が、日本列島の風景の変貌が記録されました。8ミリは私たちの生活に溶け込んだ基底文化としての映像文化を作り出しました。この基底文化を土壌に、後に多くの映画の作り手たちが生まれたのです。
 70年代、80年代にシングル8で映画を作りはじめた若い作家たちのなかから、いま活躍する劇映画の監督をはじめ、テレビやCMやミュージックビデオのディレクター、アニメーターといったクリエーターが多数登場しました。カメラマン、照明、編集、特撮など、さまざまな技術職についた方も数え切れません。シングル8は映画学校の実習にも取り入れられました。さらに、シングル8を自分の表現手段として選択し、個人ベースで映像を制作する映像作家も輩出しました。
 シングル8は日本の映像文化の共有財産です。

◆シングル8の現状
 80年代以降、ホームビデオの台頭、さらにはデジタルビデオの登場でユーザーが大幅に減少しました。
 しかし、現在もシングル8フィルムで映像作品を作っている作家が多数存在します。山田勇男、万城目純、関根博之、山崎幹夫、石井秀人らは現在もシングル8で制作し、彼らの作品は海外の映画祭に出品され、国内の美術館に収蔵されたりしています。
 映像教育の現場でも、今なおシングル8フィルムは使われています。武蔵野美術大学、多摩美術大学、東京造形大学、早稲田大学第二文学部、早稲田芸術学校、阿佐ヶ谷美術専門学校などでは、2005年度、2006年度の授業内でシングル8フィルムが使用されていることが確認されています。
 シングル8は、今も生きている文化なのです。これまでシングル8が担ってきた役割をすべてデジタルビデオで肩代わりできるなら、シングル8の価値はないかもしれません。しかし、シングル8でなければならないと考える作家や教育者や個人ユーザーがいるのです。その理由は、シングル8がフィルムだからにほかなりません。
 
◆フィルムメディアの重要性
 いま問われているのは、映像文化を電子メディア(アナログビデオを含む)だけにするか、二つのメディアの共存する文化として存続させるかということです。
 フィルムはビデオと比較すると人間がものを見る構造にはるかに近いメディアです。比喩的にいえば、私たちは眼球の中の網膜というスクリーンに映った映画を見ています。網膜に映っているのは一枚の絵です。そして、映画の最小単位も一齣の絵(写真)です。ところが、ビデオを最小単位に還元すると光の点になってしまいます。ビデオのワンフレームの映像は一枚の絵としては存在せず、高速で移動する光点の残像によって描かれます。この違いは決定的です。つまりビデオやコンピュータはより情報に近く、フィルムは網膜そして絵画に近いのです。フィルムは人間がものを見ることに直結した、映像文化の存在論的な根拠といってもよいでしょう。
 また、写真も含めフィルムは映像の記録媒体の中で最も長期保存性に優れています。ビデオテープやDVDはフィルムに比べると歴史が浅く、保存性が実証されていません。さらに、ビデオやDVDはそのフォーマットがなくなり再生機がなくなると画像を見ることができませんが、フィルムは肉眼で一齣の絵を見ることができます。映写機がなくとも、フィルムから映像を容易に再現できます。電子メディアは画像を一時保存し移動するためのフロー(流動)型メディアであり、フィルムはストック(貯蔵)型メディアなのです。

◆シングル8存続に向けたユーザーからの行動
 8ミリはフィルム文化の入り口にあって、若者や個人がわずかな投資で、フィルムによる映画の創造を可能にしてくれるメディアです。8ミリを失ったとき、映像文化は知らず知らずのうちに貧しいものとなっていくでしょう。
 しかし、事態は切迫しています。私たちは、メーカーの努力のみを期待するのではなく、こちらからも行動を起こし、メーカーと共にシングル8存続の道を模索します。

◆フィルム需要の拡大
 フロー型の電子メディアと、ストック型のフィルムメディアという特性を使い分け、ハイブリッドな環境の中で、両者をうまく共存させてゆく必要があります。映像文化を後世に遺していくためにも、フィルムというストック型メディアの技術的伝統を絶やしてはなりません。
 最大の問題は、フィルムの需要が少ないことです。
 8ミリフィルムによる撮影・編集・上映という現状のシステムに加え、ハイブリッドな制作プロセスの中にフィルムをうまく位置づけることができれば、事態は変化するかもしれません。撮影を8ミリでおこない、24pやHDVにテレシネして編集し、ビデオやハードディスクから上映をしたり、16ミリ、35ミリにキネコする、といった制作プロセスの確立が求められます。
 また、映像教育の現場では撮影はフィルムメディアで教えたいと考えている教育者が数多く存在します。露出やレンズの描写といった映像表現の基礎はフィルムメディアのほうが学びやすいからです。大学、専門学校はもちろんのこと、小・中・高の視聴覚教育や、映像ワークショップのなかで8ミリフィルムを取り入れられることができれば、需要は拡大していきます。

◆活動目的
 この会は以下の目的で活動します。
1)差し迫った課題として、シングル8フィルムの生産が維持できるような可能性を探り、富士写真フイルム株式会社に対してさまざまな提案をおこないます。
2)私たちは、フィルム文化存続のため、その素晴らしさと重要性を社会にアピールしてゆきます。
3)フィルム文化存続のためのインフラストラクチャー(社会的経済・生産基盤の整備)の可能性を探り、可能性があればそのために行動します。

 メーカーとユーザーの協力によってシングル8を存続させることに成功すれば、今後やってくるであろうフィルム文化全体の終焉の危機に対処するモデルケースとすることができるかもしれません。フィルム文化を存続させるために、私たちは行動します。

発起人
大林宣彦(映画監督)、高林陽一(映画監督)、飯村隆彦(映像作家)、松本俊夫(映像作家)、波多野哲朗(映像研究家)、ほしのあきら(映像作家/多摩美術大学教授)、大久保賢一(映画評論家)、山崎幹夫(映画作家)、黒川芳朱(映像作家)、水由章(ミストラルジャパン/One's Eyes Film)、片山薫(ミストラルジャパン/One's Eyes Film)、太田曜(実験映画作家)、万城目純(映像作家)、黒川由美子(TAMA映画フォーラム実行委員)、原将人(映画監督)、堀越謙三(ユーロスペース代表/東京藝術大学大学院映像研究科教授)、大森一樹(映画監督)
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by film-expression | 2006-07-17 17:52 | 発足にあたって


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